梅干しの歴史を紐解くと、約1500年前に遣隋使であった小野妹子によって日本にもたらされたと言われています。もともと中国では梅干しではなく梅の実を燻製させて作った「鳥梅(うばい)」というものが薬として珍重されていたようです。そのため、わが国においても当初は薬用として使用されていたという記録が残っています。その後、平安時代や鎌倉時代には高級食品として貴族の間で食されており、戦国時代には戦場に出かける際に腰に梅干しを携帯していたという記録も残っているようです。
その後、江戸時代に入ると日本人の手によって梅の品種改良が進み庶民の間にも梅の食用が広がりました。
梅干しが医療や健康面で脚光を浴びるようになったのは、明治時代になってコレラや赤痢の予防、治療に幅広く用いられ、大きな効用のあることが証明されたからです。
また、梅干には強い殺菌作用だけではなく〝三毒を絶つ〟と言われているように毒素を体外に排出する働きがあります。
この三毒というのは〝体内の水分の汚れである「水毒」〟〝食生活の乱れによる「食毒」〟〝血液の汚れである「血毒」〟です。このように梅干しには血液をサラサラにする等さまざまな効用があることが判ってきました。
酸性化している血液はドロドロで黒ずんでいますが、梅干しを食べることでサラサラとした血液に変わると言われています。更に梅に含まれる酸っぱさを作るクエン酸は高い殺菌作用があるため食中毒の予防にも効果があります。
私は農作業をする日には梅干し入りのおにぎりを持参し、肉料理を食べた後には梅干しを食べるようにしています。梅干しの難点としては塩辛いということで高血圧の人には敬遠されがちですが、これを緩和するには減塩の梅干しが適しています。
このように、梅干しは日本以外の国にはあまりないようですが、日本人の智恵が生かされた世界に誇れる食品の一つです。また、紫蘇を入れない白干し、梅ヨーグルト、蜂蜜梅、焼き梅等色々な食べ方がありますし、青梅のシロップ漬けやみそ漬け等も美味ですので、是非試してみてください。
(文責 中尾直史)