先進国で最低の食料自給率

 

 「人間が生きていくために必要な物は何ですか?」と質問されたら、皆さんはどのように答えますか。この問いに対してはさまざまな答えが返ってくると思います。
しかし、「最低限に必要なものは?」というと命を維持していくための物、つまり水・食料・エネルギーということになりますが、今の日本における最大の課題はこの主要な三つの多くを海外に依存しているということです。
水とエネルギーについては別途取り上げるとして、毎日摂取している食料について考えてみたいと思います。
今、スーパーやデパートの食料品売り場に行くと、世界各国から輸入された溢れんばかりの食材が並んでいます。最近はこれまで国産が当たり前であった食材も海外産が目につくようになってきました。
今年の3月25日に農林水産省から発表された食料自給率の国際比較によると日本はカロリーベース、生産額ベース共先進国で最低の状況となっています。
通常使われているのはカロリーベースの自給率ですが、カナダ266%、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%、スイス51%に対して日本は37%しかありません。言い換えると我々が食べている食料の6割以上を海外に依存しているということになります。
しかし、最初からこのような状況であったのではなく、過去半世紀の間で急激に変化(低下)してきたのです。因みに1965年(昭和40年)には73%であり、上記の国の中でもアメリカ、フランスに次ぐ順位であり、ドイツとほぼ同じ水準だったのです。
その後1975年(昭和50年)には54%と急激に低下し、更に1985年(昭和60年)には40%という水準になり長期的に減少傾向で推移しています。
そして、この間の変化を見ると摂取する総カロリーには大きな変化がありませんが、米が激減し、畜産物と油脂が大幅に増えているのです。
今、世界人口の増加とBRICsをはじめとする国々の大きな経済成長の結果、世界のいたるところで食料の争奪戦が起こり始めてきました。これに輪をかけたのが今回のロシアによるウクライナ侵攻で、世界的な食糧危機が喧伝され始めています。  自給率の低さは言い換えると海外依存度の高さということです。食料を輸出している国の中でも自国の食糧確保のために輸出制限を行う国が増えてくると、多くの食料を輸入している日本のような国はたちまちのうちに危機に陥ることになります。
このような状況を国民一人ひとりが認識しておくことが何よりも大切ではないでしょうか。
    (文責 中尾 直史)



2022年06月21日