また、日本にとって看過できないのは、深刻さを増す食糧危機です。19世紀初頭には18億人であった世界の人口は、爆発的に増え昨年ついに80億人を超えました。 更にロシアによるウクライナ侵攻や気候変動による農作物の不作等により、世界の飢餓人口が急増しています。現在、日本の食料自給率は先進国で最低レベルの38パーセントしかなく、世界各国から食料を輸入しています。そのためいつ食糧危機に見舞われるかわからない状況ですが、食に関する国民の危機感はまだ乏しいようです。
スーパーやデパート、コンビニ等の食品売り場には、国内外の食品が陳列されており、さまざまな外食産業も増加しています。そのため深く考えずに食材を購入し、食事の手間を省くために外食をするという傾向が増えてきています。しかし、これらには多くの健康にとって有害な農薬や食品添加物が含まれている可能性があるため、選食力を高めることが大切です。『生産者の顔が見える』というのが安全な食材の条件であり、究極の選択は自分で作るということになります。
近年、食の欧米化が急速に進み、肉や小麦、油脂などの輸入食材の消費が増えてきています。この結果、米の消費が減り、伝統的な和食やおふくろの味に代表される家庭での手づくり料理が影を潜めてきています。
更に、食は地球環境に大きく関わっていることを認識しておく必要があります。
農作物の収穫を増やすための森林の伐採、土壌の汚染、食料廃棄、水の大量消費、フードマイレージの増加等が地球環境の悪化につながっています。
今一度、食に関する様々な課題についての理解を深め、身近なことから実践することが何よりも大切ですが、そのための基本は家庭での食育です。
最後に、教育の三本柱は「知育」「徳育」「体育」と言われていますが、私はこの土台に「食育」があると考えています。国民一人ひとりが自らの研鑽をはかると共に学校や企業、家庭等あらゆるところでの食育をベースとした教育力を高めていきたいものです。
(文責 中尾直史)