秋の味覚~秋刀魚の高騰

 秋の味覚の代表的な魚と言えば日本人なら誰もが秋刀魚と答えると思います。
秋刀魚は大衆魚として、日本の家庭にとっては秋の食卓の定番でした。手ごろな値段ということもあって、夕食には一人2匹ずつの秋刀魚を食べていたというのも記憶に残っています。
 しかし、2010年以降急激に漁獲量が減少し、漁獲量は当時の4分の1と急減しました。これに伴って価格も上昇し、最近はとても大衆魚というイメージには程遠い状況になっています。
 この原因の一つは、地球の温暖化による海水温の上昇や海流の変化です。秋刀魚は北太平洋の広い範囲に生息しており、夏は北の海域に、秋から冬には南の海域の産卵場に回遊していますが、秋刀魚が沖合に移動しているのです。
 原因の二つ目は外国による漁獲量の増加です。昔は秋刀魚の漁獲は日本とロシアが中心でしたが、近年は韓国の他台湾、更に中国の漁獲量が増加してきています。日本はこれまでと同様、日本の近海で小型漁船による操業を続けていますが、台湾等は冷凍設備を持つ大型漁船による沖合での操業が中心で、大量の捕獲を行っています。このため、漁獲量に大きな差が生じることになっています。
 また、三つ目の原因として鯨やイルカや大型魚の餌になっていることも挙げられており、これには捕鯨の制限等も大きく影響しているのです。
 そして、漁獲量の減少は秋刀魚に限ったものではありません。鮭やスルメイカなども同じ状況に陥っています。まさに、漁業に従事する人たちの減少も含め、課題が山積しており、早急な対策が求められているのです。

 (文責 中尾直史)

2023年10月12日