皆さんは『マクガバン・レポート』という名前を聞かれたことはありますか?アメリカでは1960年代後半、生活習慣病の増大により国民の医療費が膨れあがり、心臓病だけでアメリカ経済がパンクしかねない状況でした。そのため1977年、フォード大統領は民主党の副大統領候補でもあったジョージ・S・マクガバン上院議員を委員長とするアメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会を設置し、総力を結集して様々な観点から調査を行いました。そして、世界各国の食事の内容を調査し5,000ページにも及ぶ膨大なレポートを発表しましたが、〝人の食生活は命を奪う死病の元である〟と結論付けたことで全米に衝撃を与えました。
そして、心臓病をはじめとする諸々の病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした「食源病」であり、薬では治らない。特に肉、乳製品、卵といった動物性食品から脂質やタンパク質を過剰摂取すると、生活習慣病の危険性が高まるため高カロリー、高脂肪の食品つまり動物性食品を減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜、果物を多く摂るように勧告しました。
この中で興味深いのは最も理想的な食事は日本人が元禄以前に食べていた食事であると明記されていることです。つまり精白しない穀類を主食とし、季節の野菜や魚介類といった内容になります。
このレポートはアメリカの現代栄養学の基礎となり、以後アメリカは食生活の改善により、心臓病やがんをはじめとするさまざまな疾病予防に取り組み成果を上げてきました。これを契機にアメリカ国内はもとより世界中で日本食ブームが起こることになったのです。
(文責 中尾 直史 )