私もしばしば家族以外の方と食事をすることがありますが、手を合わせて「いただきます」と言う人がいる一方で、何も言わずに食べ始める人もいます。恐らく小さい頃からの習慣が続いているのでしょう。最近、幼稚園や学校で、先生が食事の前に「いただきます」という言葉をかけるように指導したところ、「お金を払っているのに、どうしてそのような言葉を言わせるのか。自分の家ではそういうことをしたことがない。」というクレームが寄せられたということを聞き、愕然としました。
〝いただきます〟という言葉には深い意味があります。単に〝食事をいただく〟と考えている人が多いようですが、本来の意味は〝動物や植物つまり生きものの生命(いのち)をいただく〟ということです。また、いただいた生命を大切にして、生かしていくという意味も込められています。つまり、いのちを尊重し、感謝するということなのです。よく「生きる力」の重要性が話題になりますが、人間は〝生かされている〟と考えることが大切です。このような感謝の心を育てることによって、「世のため人のためにお役に立ちたい」と考えるようになると思います。
「いただきます」に相当する英語やドイツ語、フランス語は何かと考えても、そういう言葉は見当たりません。食事の前のお祈りは神に対するものであって、日本語の「いただきます」の中に込められている「いのちの尊重、感謝」ではありません。「いただきます」という言葉を再認識して、しっかりと子ども達に伝えていきたいものです。 (文責 中尾 直史)