世界水の日に当たって

 

 3月22日は『世界水の日』です。この日は、淡水の保全と持続可能な淡水資源管理の促進への人々の意識を啓発し、各国の行動につなげるという趣旨で1992年12月の国連総会で制定されました。
この背景としては、地球上のすべての経済活動や社会活動は、質の良い淡水とその供給に大きく依存しているにもかかわらず、人口と経済活動の増加により、多くの国が急速に水不足に陥ったり、経済成長に行き詰まったりしているという危機感があげられます。
その後、1998年に〝世界の水と生命と環境に関するビジョンの策定〟を目指して『21世紀にむけた世界水委員会』が発足しました。
そして、2000年3月にオランダのハーグで開かれた第2回世界水フォーラムにおいて「21世紀における世界水ビジョン」が発表されました。以降世界水フォーラムは3年に1度、この「世界水の日」に合わせて世界の重大な水問題を討議するために開催されています。
現在、日本では水道の普及率が98パーセントで、蛇口をひねると水がでてくるという状況のため水に対する関心は高いとは言えません。しかし、最新のデータによると世界人口の半数の家には安全に管理された衛生設備がなく、4分の1(約20億人)が安全な飲料水を利用できず、3分の1は水と石鹸を備えた手洗い場が自宅にないという状況です。そして、毎年300~400万人が水系の伝染病により、また200万人以上の児童が下痢で死亡しています。
「世界水の日」は、2015年9月に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の6番目(安全な水とトイレを世界中に)の達成に向けてアクションを取るための日でもありますが、SDGs目標達成にはほど遠い現状です。
世界人口が80億人を突破し、今後ますます深刻な水不足に直面することが予想される中で、水問題に真正面から取り組んでいくことが不可欠です。
20世紀は「石油の世紀」と言われるくらい石油をベースとした工業化が進展し、世界各地で石油をめぐる紛争が起きましたが、21世紀はまさに「水の世紀」になりそうです。これから水に関するテーマを順次取り上げていきたいと思っています。
(文責 中尾直史)

2023年03月23日