カカオ豆をめぐる諸課題

 チョコレートの材料はカカオ豆ですが、高温多湿の熱帯でしか生息していないため、恐らく日本人でカカオの木を見た人は少ないと思います。私も以前インドネシアで見た果実は、長さは25センチ前後、直径は10センチくらいで幹から直接ぶら下がっていました。
カカオ豆の生産高トップはコートジボアール(象牙海岸)で世界生産の約4割、次いでガーナ、インドネシア、ナイジェリア、エクアドル、カメルーン、ブラジルと続き、この6か国で約5割を占めています。これを見ると圧倒的にアフリカ諸国に依存していることが分かります。このカカオ豆の生産、販売については食品企業や流通企業のメジャーが独占していますが、さまざまな課題が指摘されています。
 一つ目はアフリカ諸国における紛争等の治安に関する影響、二つ目は年少者の強制労働によるカカオ豆の採取やトレーサビリティの透明性、三つ目は深刻化する環境問題です。森林破壊の実態については前述しましたが、最大の生産地であるコートジボアールでは、カカオ以外の樹木が伐採、焼却され、かつて国土の25パーセントを占めていた熱帯雨林が4パーセントにまで消滅してしまいました。このような憂慮すべき状況を踏まえ、世界大手のチョコレート関連企業は森林破壊と森林劣化、フェアトレードの調達を発表していますが、どれだけ歯止めがかかるか注目を集めています。
 また、カカオ豆だけでなくバナナやコーヒー豆、天然ゴム、茶、アブラヤシ等の生産にも同様の環境問題があることが指摘されています。我々はチョコレートの美味しさを追求することに目を奪われがちですが、これらの裏側にある影の部分についても理解しておくことが大切ではないでしょうか。
(文責 中尾直史)


2023年03月02日