生態系の崩壊~サンゴの白化現象

 さまざまな環境の悪化によって生態系が崩壊し、多くの動植物が死滅してきています。この結果、人間が生きていくのに必要な食料が不足することになり、人間の生存が危ぶまれる事態になってしまいます。
この代表的な例をいくつか取り上げてみたいと思います。一つ目は世界各地で急速に広がるサンゴ礁の消滅ですが、この大きな原因は、地球の温暖化による海水の上昇です。
サンゴ礁には海の中で最も多くの生物が集まり生活しています。そして、魚類、ナマコ、貝類などの小さな生物の隠れ場や魚の住処になっており「海の熱帯雨林」とも呼ばれています。サンゴが棲息するのに最適な水温は25°Cから28°Cと言われており、30°Cを超える水温が続くとサンゴの体内で共生している褐虫藻(かっちゅうそう)が放出され、減少し始めます。サンゴは褐虫藻が光合成することでエネルギーを補給しているため、白くなったサンゴは栄養を受け取れなくなり、やがて死滅してしまいます。このほかに、淡水や土砂の流入、富栄養価、強い光などサンゴにとっての複合的なストレス要因もあげられます。
日本における最大のサンゴ礁は石垣島と西表島の間の東西およそ20キロ、南北15キロにわたって広がる「石西礁湖」ですがサンゴの骨格が透けて白くなる「白化現象」が急速に広がりました。
また、世界最大のサンゴ礁として知られるオーストラリア東岸の世界自然遺産であるグレート・バリア・リーフには1500種を超える魚やウミガメ、クジラやイルカが生息していますが、ここでも深刻なサンゴの白化現象が確認されています。
このように、近年、世界の海のいたるところでサンゴの白化現象が確認されており、このままでは今後20年間で70~90パーセントが消滅し、80年後には地球上のすべてのサンゴ礁が死滅する可能性が高いというこということも指摘されています。
地球の温暖化ガスを発生させているのはとりもなおさず私たち人間です。環境の悪化に歯止めをかけるための国や企業の取り組みは欠かせませんが、私達一人ひとりの行動を変えていくということも大切です。
(文責 中尾直史)

グレートバリアリーフ

2023年01月31日