人間の舌の表面には「味蕾(みらい)」という味覚を感じとる器官があります。この味覚でとらえた味の情報が脳に伝わりますが、この味蕾には個人差があるため「味覚」の感じ方は異なることになります。
味覚には「甘味」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」の5つの基本味があり、これらはそれぞれ、体に必要な信号を伝える役割を持っています。
「甘味」はエネルギー源になる糖分があることを、「塩味」は体液のバランスを保つミネラルの存在を、「うま味」は筋肉や内臓、ホルモンのもとになるタンパク質の存在を知らせます。これら3つの基本味は、体にとって必要な要素であることを認識させるため、子どもが好む味になっています。
これに対して、「酸味」と「苦味」は子どもが嫌がる味ですが、「酸味」は食べ物が未熟であることや腐敗していることを、「苦味」は毒が含まれていることを体に伝えています。
子どもが嫌いな食べ物としては圧倒的に野菜が多くゴーヤ、ナス、セロリ、グリーンピース、ピーマン、トマト、アスパラガス、ほうれん草があげられます。また、酢の物やレバー等を嫌う傾向にありますが、これも人間の本能が、「これは有害だ」と判断しているからです。
味覚の感じ方には個人差があるため、苦味に敏感な人、甘味には鈍感な人など、同じ味でも人によって感じる味覚が異なるのです。興味深いのは子どもの好き嫌いの多さと家族環境は密接に関係していることが分かってきました。朝・夕食を毎食家族そろって食べる子どもは、1人でご飯を食べることのある子どもに比べ、好き嫌いが少ないという傾向が見られますし、家庭菜園等で自分が育てた野菜については好んで食べるようになるようです。家族団らんの食事の大切さを痛感しています。
(文責 中尾直史)