21世紀以降、世界人口の急増と経済の急成長に伴い、食料やエネルギーの需要が増大してきています。このような状況下にあって、日常生活を維持するための食料やエネルギーの確保が極めて重要になってきましたが、日本の現状を見ると食料の自給率は38パーセント、エネルギーの自給率は11パーセントしかなく、食料やエネルギーの大半を海外からの輸入に依存しています。
日本はこれまで二回にわたるオイルショックや原子力発電所の事故に見舞われてきましたが、致命的な状況に陥ることなく何とか乗り切ってきました。また、食料についても餓死者や栄養失調者の発生等の危機的な状況は回避してきました。
しかし、近年干ばつや洪水・熱波等の気候変動や政情不安、紛争が頻発してきています。この結果、食料やエネルギーの安定的な確保ができなくなるとたちまち経済や社会生活に支障が出てくることになります。これらを防ぐためには国策として自給率を高める指針を掲げ実行に移すと共に国民一人ひとりが危機感を持って強力に取り組んでいくことが必要です。
この参考になるのが、カリブ海に浮かぶ島国キューバの取り組みです。キューバは1959年のキューバ革命をきっかけに社会主義国になり、以降は同じ社会主義国であるソ連や東ヨーロッパ諸国から食料・資源を輸入するようになりました。当時の食料自給率は現在の日本と同じ4割程度でしたが、1991年のソ連崩壊後の経済危機により、従来の石油輸入量の50%以上と輸入食料のほとんどが届かなくなりました。
この結果、多くの餓死者が出るほどの食料危機に陥りました。この絶望的な状況から脱却するためには何としても輸入資源に依存しない食料生産方式への転換が必要不可欠であり、国を挙げて取り組みを開始しました。 ≪続く≫
(文責 中尾直史)