世界の飢餓人口


 世界人口は年々増え続け現在では約78億人になっていますが、生活のレベルには大きな格差があり、文化的な生活とは程遠い環境下で生活している人が数多くいます。そして、10人に1人にあたる8億人が飢餓に苦しんでおり、このうち紛争地域に住む人の割合が60%を占めています。
前述したように、これまで人口の増加による消費量の増加に対応して生産量も増加してきたため需給のバランスは計算上では保たれてきましたが、それでもこれだけの飢餓人口が発生しているのです。
穀物の生産量は「生産している土地の面積」と「一定の面積の収穫量」の掛け算で決まります。これまで、この生産量が増え続けてきたのは、この両方が大きくなってきたからです。土地の面積を増やすためには、まず山を切り開き草原を耕す、次に雨が降らなくても作物が必要な時に水を使えるように灌漑する、更に肥料をたくさん使い品種改良を行なう、といった取り組みが必要になります。
しかし、近年穀物生産量が以前ほど増えなくなってきています。この原因としては、穀物を作る田畑の面積が減ってきている、穀物を育てるための水が不足してきている、肥料をやっても生産量が上がらない、といったことが挙げられます。土地に関しては、耕作や放牧のし過ぎで土地がやせて砂漠化するという現象が各地で見られており、世界中では5秒ごとに校庭一つ分の森林が砂漠化していると言われています。また、わが国に見られるように、耕作地をつぶして家や工場、道路などの建設を行なってきているというケースもあります。
とりわけ注目すべきは水に関する問題です。農作物を育てるには降る雨だけを頼りにするよりも河川や地下水を利用する方が効果的です。しかし、近年工業化の進展に伴って、工業用水として使用される量が増え、農作物栽培のための水不足が生じてきています。更に化学肥料の使用を続けてきた結果、土地の力が弱まり、収穫量が落ちてきているのです。
こういう状況を考えると穀物の需給バランスが維持できるかどうかは疑問ですし、世界における紛争の拡大によって飢餓人口が増加する可能性が大きくなるかもしれません。
 (文責 中尾直史)

2022年07月15日