太平洋戦争の敗戦により、日本社会は多くの面で大きく変化しました。前述したようにアメリカの占領政策によって日本人の精神的な支柱が失われるようになったということを紹介しましたが、近年日本の家から急速に失われてきたものが三つあると言われています。
その代表的なものの一つが仏間です。最近では核家族化が急速に進んだ結果、本家には仏壇があるが自分の家にはないという家庭が増えてきています。仏壇がないということは当然のこととして仏間がないということになりますし、家を新築する際にも仏間を作らないというケースも散見されます。そのため法事の時以外には仏壇に手を合わせたことがないし、自分の家の宗旨もわからない。仏壇がないため毎朝仏飯とお水を供え、仏様やご先祖様に日常生活の悩みや悲しいこと、嬉しいことなどを打ち明けるといったこともしないという人が増えています。恐らくこのような環境下で育った子ども達が先祖に対する畏敬の念を持つことはないでしょう。
子どもは親の後姿を見て育つと言われますが、仏壇の前で手を合わせる親の姿を見て子ども達は何かを感じるのではないでしょうか。心を育てることの大切さを痛感しています。 ≪続く≫
(文責 中尾 直史)