日常生活の中の干支~方角・方位

 干支は時間だけではなく、方角を示す際にも使われており、東西南北はそれぞれ卯・酉・午・子と定められています。しかし、それ以外の干支はその中間である南東、南西、北西、北東には一致しないため一般的には方角として使われていません。例えば丑の方角は“北北東より少し南寄り”(北東微北)というように面倒なものになるからです。そして、北東=艮(うしとら)、南東=巽(たつみ)、南西=坤(ひつじさる)、北西=乾(いぬい)と呼ばれるようになりました。
苗字の中にもこれらの方角を示す「東」「南」「西」「北」に加えて、「辰巳」「乾」等が使われていますし、地球の北極と南極を同じ経度の点で結ぶ線(経線)は子午線と呼ばれています。このように干支は私たちの生活の中にさまざまな形で溶け込んでいます。
また、方角・方位に関しては一般的に忌み嫌われている方角があります。これが古来より「鬼門」と呼ばれている北東の方角です。
今日においても、とりわけ一般民家の建築の際に鬼門に対する警戒が見られ、この方角に便所や浴室を設けることを避ける風習が残っています。そして、鬼門除けと称して、この方角に稲荷(いなり)などを屋敷神として祀(まつ)ることが広く行われています。
鬼門に対する俗信はきわめて多く、鬼門に向けて家を建てたり、この方角に出入口を設けたり、家の出っ張った所を作ったりすると、その家からは病人や災難が絶えないとか、分家を鬼門の方に出すと本家が成りたたないということも言われています。更に鬼門と正反対の方角である未申(ひつじさる)(南西)の方角も裏鬼門または病門(びょうもん)と言われ、鬼門と同様に忌み警戒されています。
一方で、毎年その年の吉方向と言われる「恵方」があります。まもなく節分を迎えますが、豆まきや巻きずしのまるかじりといった行為もこの方角に基づいて行うことになっています。
このように、干支は私達の生活の中にさまざまな形で溶け込んでいるのです。
(文責 中尾直史)


2023年02月01日