最近はスーパー等で飾りつけのための鏡餅が販売されているため、新年を迎えるにあたって、これらを使用されている家庭も多いのではないかと思います。しかし、従来の風習では、年末に餅つきをして、最初に鏡餅を、その後に自分達の食べる餅を作っていました。そこで、今回わが家では昨年の11月に作っていた干し柿と年末に作ったお餅を使って飾りつけを行ないました。残念ながらパン焼き器での練り餅です。
そもそも鏡餅は神様にお供えしてからいただく尊い餅であり、神様と人を仲介するという意味を持っています。では、なぜ重ねた餅を鏡餅と呼ぶようになったのでしょうか。それには二つの理由があります。
一つは丸い餅の形が昔の銅鏡に似ているからです。古来より、鏡は神様の魂が宿る〝霊力〟を備えたものと考えられていました。そのためお餅を神の宿る鏡に見立てて、丸く形作られた鏡餅は神聖視されお正月に供えられることになったのです。
二つは鏡餅の「鏡」は「鑑みる(かんがみる)」。つまり良い手本や規範に照らして考えるという意味の言葉にあやかり、「かんがみもち」とよぶ音が次第に変化して鏡餅になったと言われています。
更に、鏡餅の丸い形は家庭円満を表し、重ねた姿には一年をめでたく重ねるという意味もあるそうです。
また、鏡餅の上に載せる橙(だいだい)は木から落ちずに大きく実が育つことにあやかって、代々家が大きく栄えるようにという願いが込められており、鏡餅の下に敷く裏白(うらじろ=シダ)は古い葉と共に新しい葉が次第に伸びてくるので、久しく栄えわたるという縁起をかつぐものです。更に干し柿は10個が串に刺されており、真中が6つで両端が2つずつになっていますが、この意味は〝にこ にこと なかむつまじく〟ということです。
このように、神への祈りと一年無事であったことを感謝する気持ちを込めて飾るさまざまな行為は日本人が永年引き継いできた固有の文化なのです。
(文責 中尾直史)