11月23日は、日本の祝日の一つである『勤労感謝の日』です。この日は戦後国民の祝日が定められた1948年(昭和23年)に「勤労を尊び、生産を祝い、国民がたがいに感謝する日」ということで制定されました。
戦前、この日には『新嘗祭(にいなめさい)』が行なわれていました。今は「新嘗」と言ってもピンとこない人が多いと思いますが、その年に収穫された新しい穀物のことなのです。日本では古くから五穀の収穫を祝う風習があり、新嘗祭は天皇が国民を代表して農作物の恵みに感謝する式典として古くから続く国家の重要な儀式として受け継がれてきました。また、この日には全国の神社でも新嘗祭が行なわれていました。
そのため勤労感謝の日を制定するにあたっては、「新嘗祭の日」として祝いたいという意見もあったようです。しかし、労働とは本来農業に従事して生産を行なうものだけを言うのではなく、二次産業や三次産業なども含めた幅広い意味を持つということから最終的には「新嘗祭の日」という考え方は却下され、『勤労感謝の日』が定められたのです。
これまで、日本では真面目にコツコツと働けば相応の暮らしができるということで、「勤勉」という精神が根付いており、一つの会社で定年まで働くという終身雇用の考え方が定着していました。そして、企業も従業員の雇用を守るということを第一義に考えてきました。このような勤労観が日本という国を支えてきたのは間違いありません。
しかし、雇用維持のために賃上げを抑制するという経営スタイルが人材の流動性を妨げ、国際的な賃金比較においても先進国中最低レベルになってきました。そして、最近の急激な円安で諸外国との給与水準は更に拡大してきています。
また農業、林業、水産業等の一次産業や介護、保育等に従事する人達の収入も低い水準にとどまっており、深刻な人手不足に陥っています。
勤労感謝の日にあたって、今一度〝働く〟ということの意義を考えていきたいものです。
(文責 中尾直史)