11月3日は日本の祝日である文化の日ですが、新聞に「秋の叙勲受賞の氏名」が掲載されている以外はテレビ等のマスコミ報道を見ても、ほとんど報道されていないという状況です。現在、日本には「祝日法」に基づき16の「国民の祝日」が制定されており、休日になっています。また、近年は振替休日やハッピーマンデー法により「成人の日」「海の日」「敬老の日」「スポーツの日」が特定の月曜日になる等の措置によって連休が増加してきており、現状の国民の感覚は単に休みの日が増えたという感覚に陥ってしまっています。
この「文化の日」は非常に重要な意味を持っています。戦前は『明治節』と呼ばれ、明治天皇の誕生日を寿(ことほ)ぎ偲ぶ日で、明治時代には『天長節』と呼ばれていました。この名称は中国春秋時代の思想家である老子の「天長地久」という言葉をとって、唐の玄宗皇帝の誕生日を「天長節」としたことに由来しています。
その後、敗戦の翌年の1946年(昭和21年)のこの日、日本国憲法が“公布”されました。そして、1948年(昭和23年)に制定された祝日法(国民の祝日に関する法律)によって、戦争放棄・主権国民・基本的人権を宣言した日本国憲法に基づき、「自由と平和を愛し文化
を薦める」祭日と定められ、「文化の日」と名づけられました。日本国憲法の尊重する、平和への意思を基盤とする文化を発展・拡大させようという趣旨です。 なお、「憲法記念日」は5月3日になっていますが、これは憲法が“公布”(国民に対して法律が成立したと公表する)された半年後の1947年に日本国憲法が“施行”(予定通りに実行され効力を持つ)された日です。憲法と文化はつながりがないように思われますが、現行の日本国憲法は基本的人権や戦争放棄を宣言しており、平和と文化を最も重要視しているのです。
最近、憲法改正をめぐってさまざまな見解が示されていますが、今一度祝日の意義を再認識していきたいものです。
(文責 中尾直史)