稲盛和夫氏逝く  その1

 この度、日本を代表する経営者の一人である京セラの創業者の稲盛和夫氏が逝去されました。27歳で京都セラミックを起業され、町工場であった同社を世界に冠たるセラミック企業に成長させると共に第二電電(KDDI)の設立、日本航空の再建に尽力されました。私は現役時代に直接稲盛氏のお話を聞く機会が三回ありましたが、会社経営のあり方やリーダーにとっての考え方に感動したことを記憶しています。その後、同氏の著書を何冊も紐解きましたが、これらの中で印象に残っていることを何回かに分けて紹介したいと思います。
一つ目は松下幸之助氏との出会いについてのエピソードです。
≪京セラを創業して間もない頃、松下幸之助氏の話を聴く機会があり参加しました。ひととおり講演が終わった後、聴衆の中の一人が「松下電器はダム式経営を行なっておられるが、どうしたらダム式経営ができるのか」という質問をされたそうです。この質問に対して松下氏はしばらく考えた後、「それはダムを造ろうと思うことですね」と答えられたそうです。これを聞いた人達は「なんだ、当たり前のことじゃないか」ということで会場は笑いに包まれました。しかし、稲盛氏だけは「そうだ、ダムを造ろうという強い思いがなければダム式経営はできない。自分の会社もダム式経営を目指そう」とそれから寝ても覚めてもこのことを忘れず取り組んだ。現在の京セラがあるのはこの言葉のお陰であると心底より思っている。≫  続く。      (文責 中尾直史)

2022年09月02日