先日、土用は年に4回あるということを紹介しましたが、今日(7月23日)は土用の丑の日です。土用の意味は知らなくても「土用の丑の日」には鰻(ウナギ)を食べるという習慣については定着してきており、数日前からスーパーやデパート等でもウナギ売り場が設置され多くの人が買い求めています。
鰻の歴史を見るとわが国では平安時代頃から鰻を食していたという文献が残っています。当時は「ムナギ」と呼ばれていたようですが、この語源は「胸黄」(胸が黄色い)とも、丸くて細長い形状が家の「棟木」に似ているからとも言われています。
土用の丑の日に食べる習慣が始まったのは、そう古いことではなく江戸時代末期です。夏の売上げ不振に困った鰻屋の相談を受けた平賀源内が「う」の字がつくものを食べると夏負けしないという民間伝承に因んで〝本日土用丑の日〟という看板を掲げたところ、飛ぶように売れるようになったと言われています。当時災いは丑の方角から来ると信じられていたことから厄除けという意味と、肉食の禁止されていた時代において高タンパクで消化も良く夏バテ防止に効くことから、瞬く間に江戸市民の間に定着していったようです。
また、鰻の血液にはイクシオトキシンという毒が含まれているため生で食べることはできませんが、火を通すと毒がなくなるということも先人はよく知っていて蒲焼という料理法を考え出したのです。
このように、我々にとっては身近な鰻ですが、その産卵場所はどこなのか謎に包まれていました。フィリピン海溝付近という説が有力でしたが、近年グァム島沖のスルガ海山付近であることが突き止められました。しかも、6、7月の新月の日に一斉に産卵することも判ってきました。生まれたばかりの鰻の卵や仔魚は,北赤道海流に乗って西方に運ばれフィリピン付近に達したのち,黒潮によって北方に輸送されます。その後行きついた東アジア各国の河川に遡上して数年から10年ほどかけて河川,湖沼または河口域付近で成長します。
日本は世界最大の鰻の消費国ですが、天然鰻の漁獲量は激減しており、7割を輸入に頼っています。また、稚魚を養殖する方式が大半を占めていますが、卵を採取して育てる完全養殖の途も開けつつあります。
(文責 中尾直史)