スポーツ界にも中村天風の薫陶を受けた人は数多くいますが、野球界では代表的な人物として広岡達朗氏があげられます。広岡氏は選手として巨人に入団し新人王としてベストナインに輝き、チームの主力選手として活躍しました。そして、引退した後は評論家を経て広島やヤクルトでのコーチを歴任、その後ヤクルトと西武の監督に就任し、セ・パ両リーグで日本一を達成しました。こうして野球指導者としての手腕が高く評価され、1992年(平成4年)に野球殿堂入りされました。
広岡氏の目指す野球は中村天風の唱える「心身統一法」を基盤としています。
本人が「天風の教えが私の野球人生を変えた」と述懐しています。『意識改革のすすめ』という著書には10年にわたる現役時代に経験したさまざまな出来事を踏まえて、〝プロ野球は人生の縮図である。勝者がいて敗者がいる。天国があり、地獄がある。絶大な人事権を持つ上司がいて、契約更新におびえる選手がいる。ねたみや憎悪が渦巻いている。しかし、どんな逆境にあっても、怒らず、恐れず、悲しまず、心を積極的にして生きれば、人生は好転する。そして、そういう世界だからこそ、天風の教えはいまなお通用する真理があふれている。〟と記されています。
こうして、禁酒、禁煙、禁麻雀は未成年だから当然として、食事では白米より玄米の励行に野球選手の定番でもある肉の大量摂取まで制限し、グラウンド上では口うるさいほど基本の徹底を課したのです。更にユニフォームを脱いでからの生活についても厳しく管理することにしました。選手達にとってはたまったものではなかったと思いますが、見事に大輪の花を咲かせることになったのです。(文責 中尾直史)
