中村天風はヨーガの聖人であるカリアッパ師に弟子入りし、ヒマラヤ第三の高峰であるカンチェンジュンガ山麓にあるゴーグ村で修行の日々を送ることになる。この間のエピソードを彼はいくつか紹介しています。
◇カリアッパ師は毎日、朝のあいさつの後「今日はどうだい?」と聞いてきたが、いつも「あまり良くない」と答えていた。これに対して「お前はそういうことを言って楽しいか?気持ちが良くないという言葉を発している時には愉快を感じないだろう。〝楽しいです。有り難いです〟という言葉を言った時になんとも言えない快さを感じるだろう。お前の生きる力がその言葉の良し悪しによって良くも悪くもなるのだ。消極的な言葉を出すな。」
◇心も体も生きるための道具に過ぎない一番尊いのは霊魂という一つの気体である。
◇お前はこの世に何しに来たのか?よく考えろ。
◇難行苦行をするために非常に強い心と肉体を作り上げなければできない。
◇犬の足を刀で切りつけた後、天風の腕を切りつけどちらが早く治るか確認してみろ。
何故犬の方が早く治るのか解るか。それは傷のことを何も考えていないからだ。
◇修行の一つに毎日重い石を運び上げるというものがあり、これが一体何になるのかと問いただしたところ、重さを感じているうちは駄目だ。自分の体の一部と感じるようにならないといけない。
こういった2年半にわたる厳しい修行を通じて、天風は非常に強い心と肉体を作り上げ、クンバハカという最も神聖な極限状態に到達することになる。
こうして悟りの境地に達した天風はこれまで医学の力ではどうすることもできず諦めていた結核を完治させることになる。
◇その後、1913年(37歳)にインドを立ち日本へ向かうが、帰途中国で人生の転機となる事件に遭遇することになる。≪続く≫
(文責 中尾直史)