中村天風の教え

皆さんは大谷翔平選手の夢の実現に大きな影響を与えた中村天風という人物をご存知ですか?
大谷翔平選手は高校時代から大の読書家であり、お風呂の中でも本を読んでいたようです。そして、書物を通じて感じたことをノートに書きとどめ、何度も読み返していました。そして、日本ハムファイターズへの入団時や大リーグ入りした際にも彼が愛読していた中村天風の「運命を拓く」という書物を持参していたということが報道され、中村天風という人物がにわかに脚光を浴びることになりました。
 私がこの中村天風という人物を知ったのは松下電器に勤務していた30歳代の頃です。当時、創業者である松下幸之助翁は健在でしたが、いくつかの案を提示して選んでいただきたいというような報告をすると、すぐに自分で結論を出さずもう一度考え直して最善の策を持ってくるように指示されていました。そして、よく〝君と僕とではどちらが優秀だと思うか〟という質問をされ、返答に窮していると〝君は先人が色々と思い悩んで経験してきたことを学んだ上で自らの創意工夫を加えることができる。だから知恵を出すともっといい案ができるはずだ〟と言われていました。
 当時松下翁は経営の神様と言われており、実業界においては同氏の経営観や人生観について注目を集めていましたが、このベースになる考え方については色々な先人のことを勉強されていたようです。当時、私は松下翁に大きな影響をもたらした人物は一体誰だったのかということを疑問に思い多くの先輩の方に尋ねていたところ、中村天風氏と安岡正篤氏ということを知りました。
そこで、お二人の著書を何冊か入手して読んでみると、松下電器の経営や人としての生き方に関する松下翁の発言の随所にお二人の考えが取り入れられているように感じました。
 (文責 中尾直史)

2024年11月19日