松下幸之助の憂いと慧眼




 日本経済が絶頂期を迎えていた今から40年以上も前に、松下幸之助氏は自らの経験と直感から〝自分のことしか考えられなくなったら必ずゆきづまる。これは人間でも会社でも国家でも同じことである。今は残念ながら目先のことしか考えない人が増えてきているし、本来日本という国の進路を示す立場の政治家も将来のことを考えていない。言い換えると『国家百年の計』を持った政治家がいない。このままの政治が続けば必ず日本は衰退する。〟と今日の日本の危機的状況を予見しておられたようです。そして、この危機感が募り、1980年に70億円という私財を投げ打って松下政経塾を開塾されることになったのです。
 また、松下翁は〝これまでの世界の歴史を見ると、繁栄は古代オリエントからヨーロッパへ、更にアメリカへと西に移ってきている。大きな歴史の流れから見ると21世紀は東アジアが中心になるのは間違いない。ここに位置する日本は大繁栄を遂げるはずである。但し、その前提は日本が国家百年の計を有しているかどうか、つまり、日本をどのような国にするのかという国家の理念と方針が明確になっているということである。〟と言っておられました。現在、松下政経塾出身者の多くは国、地方で政治に携わっておられますが、果たして松下氏の熱い思いが伝わっているのでしょうか。
  今の日本の政治を見ると、経済、防衛、福祉、医療、教育、食料・エネルギーなど多くの分野において非常事態にもかかわらず、国家としてのビジョンが明確になっているとは思えません。また、言葉尻を捉える、人の失策を暴き立てるといった足を引っ張るような現象が目に付きます。また、改革には程遠い国民に迎合するような政策が打ち出される等、まさに日本丸という船が進むべき方向がわからず迷走しているように思えてなりません。
先日、参議院議員選挙が公示されましたが、政治に不信感を持つあまり、無関心な人も散見されるのは残念です。今は何よりも国民一人ひとりがしっかりと自立し、自分のことだけではなく、まわりのことや将来の日本のことを考えて行動していくことが必要であると感じています。
  (文責 中尾直史)

2022年06月26日