日本の家から失われたもの ②

 

近年日本の家から失われた二つ目は偉人に関する書籍です。私達の幼少の頃には書斎の中に多くの文学作品に加えて歴史書や偉人伝が並んでおり興味のあるものを引っ張り出しては読んでいたものです。
日本の礎を築いた聖徳太子や聖武天皇、戦国武将の武田信玄や織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、幕末の坂本龍馬や吉田松陰、西郷隆盛、明治時代の福沢諭吉や新渡戸稲造、実業家の渋沢栄一、医学に貢献した野口英雄や北里柴三郎等の偉人の生きざまに触れることによって、子どもながらにこの人たちのような大人になりたいという憧れの気持ちを抱いていたものです。そして、尊敬する人は誰ですかという質問に対しては、これらの偉人の名前を挙げる子供たちが多かったのは事実です。
しかし、今子ども達に同じ質問を投げかけると圧倒的に多いのが〝両親〟という答えです。尊敬する人物として一番身近に接している両親を挙げるというのは素晴らしいと思いますが、反面狭い範囲でしか人を見ていないということです。
近年の調査によると、ICTの普及により活字離れが急速に進み、とりわけ大学生や社会人の読書の量が減ってきているという結果が発表されました。現に電車の中でもほとんどの人がスマホをのぞき込んでいて、本を読んでいる姿は見かけなくなりました。そして、早晩中高生以下の若年層においてもスマホの依存度は確実に増加してくると思われます。
また、最近さまざまな分野でリーダーの立場にある人の不祥事があとを絶ちません。これらはとりも直さず人間としての根っこが育っていないことが大きな要因です。
人間力を身につけるには地道な努力の積み重ねが必要であり、一朝一夕にはできません。そのためには今一度、人生のお手本になる人物の生きざまに触れ、自分自身を磨くことが大切でではないでしょうか。その上で、自宅の本棚に「偉人伝」を加えていただき、子ども達が幼少の頃から人生のお手本となる人物の言動に触れることができる環境づくりをしていただきたいと思っています。 
なお、日本の偉人についてはこのコラムにおいても順次紹介していく予定です。  
(文責 中尾 直史)

2022年06月17日